2017/1/27
〈フレッシュ名曲コンサート〉東京交響楽団
三鷹市芸術文化センター 風のホール

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
~ソリスト・アンコール~
J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番より サラバンド

ラヴェル:バレエ音楽「マ・メール・ロワ」
ビゼー:劇付随音楽「アルルの女」第2組曲

ヴァイオリン:辻彩奈
管弦楽:東京交響楽団
コンサートマスター:水谷晃
指揮:アドリアン・ペルション

武蔵野文化事業団が主催する東響のコンサート。装飾を排してコストカットを実現しつつ、個性的な宣伝文句と充実したラインナップで話題を呼んでいるプロモーターだが、今回の演奏会も結果的に意義深いものであった(詳しくは後述)。なお武蔵野市民文化会館は現在改修工事中のため、三鷹のホールにて開催。

ホールが中規模程度ということで、東響は室内オケに近い編成をとった。これがなかなかに贅沢で、雑味なく艶やかな弦の響き、しなやかな管の響きがダイレクトに伝わってくる。モーツァルト・マチネでも似たような聴感上の快楽はあるが、ベートーヴェン、近代フランス音楽でもまた素晴らしいものだ。
辻彩奈さん独奏のベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」はピリオド風味でなく、かといってロマン風味漂うというわけでもない。ごく自然で誇張のないフレージングで、楽音の魅力が率直に伝わって来た。ペルションは冒頭のティンパニ4打を素っ気なく振り始め、気負わない音楽づくりがまたソリストと一致している。東響は昨秋のヨーロッパ・ツアーでI. ファウストとこの曲を演奏しているから蓄積はあるだろう。荒木さんのオーボエが序奏から美しい。

後半は、指揮者ペルションの本領発揮と言えるフレンチ・プログラム。このアドリアン(英語読みだとエイドリアン)・ペルションというマエストロ、実は前半でステージに現れた時に「あっ!」と思ったのだ。彼はフランス放送フィル現職、元ソウル・フィル(つい2年ほど前まで兼任だったはずだ)のティンパニストであり、arteやmedici.tvをご覧の方なら顔をご存知の方も多いのではないか。指揮者に転身していたとはつゆ知らずだったが、どうやらフランス放送フィルで二度の指揮者交代劇の末に鮮烈なデビューを果たしたそうだ。その後ウィーン響とのツアーを成功に導いたほか、著名オケに客演を続け、ドゥダメルのコンダクティング・フェローに選ばれるなど躍進を続けているらしい。現在はケルンでロトの下研鑽を積んでいるとのこと。
一曲目のラヴェル「マ・メール・ロワ」では指揮棒を用いず、滑らかな腕の動きと最小限のジェスチュアで導く。組曲版でなく全曲版で流れよく進むが、淡い色彩が滲み出るような音楽づくりだ。指揮者はフランス的なカラーを特に意識してはいないと思うが、自然と色香が出るあたり天性の才では。東響の木管は肉感豊か。
続くビゼー「アルルの女」第2組曲では指揮棒を持って再度登場、一転して血の気の多い音楽づくりへと変わった。若きビゼーの自由奔放な才気を体現したような力強さで、かつしっとりとした管楽器のソロも際立たせていく。終結のファランドールも打楽器系とオケ全体のバランスが適切で、格調高く仕上げるあたり確かなセンスと感じる。

東京デビューを手堅い以上の好演で飾ったマエストロ・ペルション。今後も忙しく客演が続くと話しておられたが、その天性のセンスを大事にしながら躍進を続けていただきたいもの。会場には日フィルのティンパニストであるエリックさんも訪れ、旧友との再会を喜んでいた。