2017/6/10
東京佼成ウインドオーケストラ 第134回定期演奏会
@東京芸術劇場 コンサートホール

ストラヴィンスキー:管楽器のための交響曲
リード:「ハムレット」への音楽

チャイコフスキー(大橋晃一編曲):バレエ音楽「白鳥の湖」より
~アンコール~
チャイコフスキー(クレーマー編曲):劇付随音楽「雪娘」より 道化師の踊り

吹奏楽:東京佼成ウインドオーケストラ
コンサートマスター:田中靖人
指揮:トーマス・ザンデルリング

東京佼成ウインドの定期演奏会を聴くのは、これが3度目。今年の1月にコリリアーノの衝撃体験をしてから、なるべくここの団体の定期は欠かさず来たいと思うようになった(年度に5回しかないし)。吹奏楽というジャンルにはこれまで全く親しんでこなかったし、いまも吹コンや課題曲などはさっぱり分からない。けれど、この団体がやっている音楽は面白いのだ。そして、ストイックすぎるくらいのプロ意識が演奏に滲み出ている。今回もそうだった。

ストラヴィンスキー「管弦楽のための交響曲(サンフォニー)」の実演というと、一昨年のノット/東響のそれが直ぐに思い出される。畑から野菜を引っこ抜いて、土も洗い落とさずにそのままかぶりつくような原色の音楽だった。今回はどうだ。第一音、円く美しい佼成ウインドの色が出る。レニングラード育ちのヴェテランの棒という事もあり、土俗的な響きが出てくるかと思ったが―バンドの音が勝ったようだ。よく言えば洗練された、少し意地悪く言えば角を削がれた、完成品としての音楽になった。だがそれの巧いこと、巧いこと。

リード「『ハムレット』への音楽」では、第1曲の冒頭から輝かしく管打が鳴り響き、打楽器の下支えも強烈。重量級の運びで突き進む。トーマス・ザンデルリングの指揮は風貌のみならず芸風も親父クルトを引き継いでいるが―その芯の図太い音楽が吹奏楽オリジナル作品で発揮されると、これほどまで地鳴りのような響きが生まれることになるとは。第2曲の甘さも濃厚だ。ここでは佼成の音、指揮のもつ味のバランスがちょうど良い塩梅で組み合わさったと思う。

後半は、チャイコフスキー「白鳥の湖」抜粋(大橋晃一編)。大橋氏は神奈川フィルでホルン奏者を務めた後、現在は幅広く編曲、作曲、指揮などで活躍されている方。今回のアレンジからはオケのサウンドを彷彿させる豊麗さを基調としており、またバレエの流れにも配慮した選曲だと感じた。新編曲の初演がザンデルリング指揮というのも申し分ない組み合わせだろう。速いテンポの舞曲ではバンド特有の煌びやかさが溢れ、また可憐な木管のゾリ(オーボエ宮村さん、是澤さんの妙技!)では圧巻のプレーが連続した。全曲を一貫する白鳥の主題が長調に転じて輝かしく奏される終曲では、ザンデルリングの良い意味での豪快な指揮と佼成ウインドの密なサウンドが強烈に訴えかける。バランス崩壊を恐れぬ大スケールに感銘。
実に素晴らしい演奏だったが、普段オーケストラで同曲を聴く立場からすると、管のソロを引き継ぐ弦の厚みやワルツの更なる陰影(クラリネットセクションは大健闘していたが!)を求めてしまうのはないものねだり。とはいえ、吹奏楽の「白鳥の湖」として楽しむならば全く文句のつけようがない演奏だ。

アンコールは同じチャイコフスキーの「雪娘」から軽業師の踊り。まだステージ上に演奏者が出揃ってないうちにタクトを振り下ろしてしまうのはご愛嬌で(笑)、同コンビのCD(『シェヘラザード』他)に収められた演奏よりも終結の追い込みなど痛快だった。
3曲ともに見事な構成・丁寧に磨き上げられた演奏で満足したのだが、惜しむらくは客席の寂しさ。在京オケに負けず劣らずSNS上の宣伝は力を入れていると思うのだが、もう少し入っても良いのではないか。演奏水準は在京のどのオケにも負けていないどころか、響きの純度では随一の色を持っていると確信しているのだが。来シーズンの開幕定期も楽しみだ。