2017/9/16
新日本フィルハーモニー交響楽団
♯4 特別演奏会 サファイア<横浜みなとみらいシリーズ>
@横浜みなとみらいホール 大ホール

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番
マーラー:交響曲第5番

ピアノ:デジュー・ラーンキ
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔文洙
指揮:上岡敏之

新日本フィルの2017/18シーズンが始まった。開幕公演は上岡音楽監督の指揮で、マーラー「交響曲第5番」をメインとしたプログラム。前半のベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番」は、デジュー・ラーンキの独奏、オケ共々親密で柔らかな響きを全編紡いだ。しかし正直なところ、後半のマーラーの強烈さに危うく印象が吹き飛びかけたほどだ。考えてみれば、後半の冒頭(トランペット独奏による同音反復)は、協奏曲において予告されていたと言えるかもしれない。完成度はともかく、指揮者・オケともにやり尽くしたマーラーだった。まるで一人でピアノを弾くが如き激烈な振幅を指揮者は示す。デュナーミク・テンポ、あらゆる点で最大限追従したオケはさぞ大変だったはずだ。第1楽章ではトロンボーンやコントラバスの鋭い強調が葬列を縁取り、アタッカで第2楽章へ。筆者にとって最も衝撃的だったのは第3楽章のウィンナ・ワルツだった。元来のワルツをマーラーが交響曲に取り入れた時点で、厳密に言えば音楽の「異化」が行われているわけだが、この日の演奏では原型でそれが立ち現れた。つまり、2拍目が僅かに早く出るワルツの慣習が遵守されていたのである。第4楽章のアダージェットは艶やかな弦の響きを保ちつつ、常識的なテンポで—と思っていたら、終盤で時間が止まったように進みを遅めた。最後の和音はこれでもかと引き伸ばされ、第5楽章冒頭・ホルンの一閃の後も終わりを躊躇うように弦が続く。そして漸く色彩が戻った世界へ。彼岸と此岸の対話のようではないか。第1、第3楽章のリズム処理、第4-5楽章の恍惚たる連結、これらはいずれもかつて上岡監督がシェフを務めたヴッパタール響とのCDでも確認できるが、いざ演奏会で耳にすると実に新鮮かつ効果的だ。上岡監督&新日本フィルのマーラー・シリーズ、これからも注目したい。