2017/11/10
新日本フィルハーモニー交響楽団 ルビー〈アフタヌーン コンサート・シリーズ〉 #10
@すみだトリフォニーホール 大ホール

ラフマニノフ:交響詩「死の島」
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
~ソリスト・アンコール~
シューベルト(リスト編曲):セレナーデ

レーガー:ベックリンによる4つの音詩
~アンコール~
ヴァーグナー:楽劇「神々の黄昏」より ジークフリートの葬送行進曲

ピアノ:カティア・ブニアティシヴィリ
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔文洙
指揮:上岡敏之

11月のルビー・シリーズも上岡監督の指揮で、才媛ブニアティシヴィリが共演。
中プロはチャイコフスキーの名作「ピアノ協奏曲第1番」。序奏部冒頭の有名なホルンを悠然と始め、懐広く独奏を迎え入れた指揮の作戦勝ちでは。ブニアティシヴィリはテンポの緩急を大胆に歩むが、卓越したピアニストでもある上岡が実に精妙に呼吸を合わせ、オケも巧く付けるので全体の構築が揺るがない。3楽章はやや弾き飛ばした感もあるが、中間楽章はじめ独奏の随所では繊細な美音も堪能できた。アンコールのセレナーデは豪放とは無縁の静かな世界だった。
順番が前後するが、前半のラフマニノフ「死の島」、後半レーガー「ベックリンによる4つの音詩」、これらはともに同じ素材の画にインスピレーションを受けた作品だ(レーガーは4曲中、第3曲が相当)。ロシアのラフマニノフ、ドイツのレーガーという2者の音楽的アプローチの違いが興味深い。共に仄暗い詩情が横溢し秀逸で、ラフマニノフ作品はお得意のグレゴリオ聖歌「怒りの日」も姿を現す。レーガー作品は劇性よりも厳粛さが勝り、また全4曲通して渋くも美しいオーケストレーションの妙、古典的構成美が印象に残る。上岡の指揮はいつもながら弱音の幅、リズムの隈取りが見事で、ヴァイオリン・クラリネット等明滅するソロ群も美しかった。

そして、このコンビのほぼ「恒例」となりつつあるアンコールは、これまでの中でも特に驚愕度の高いものだった。レーガーの終曲「バッカナール」の熱狂の余韻も冷めぬ中、静かにティンパニがロールを叩き始める。まるで、第3曲の「死の島」の陰鬱な世界に戻ったように―しかし始まったのはなんと、ヴァーグナー「神々の黄昏」の「ジークフリートの葬送行進曲」であった。「死」「葬送」に彩られた今回のプログラムを更に印象付けるような選曲ではないか。豪速テンポで引きずらない上岡流のヴァーグナーは、早く全曲を聴きたいもの。「ラインの黄金」での語り口の巧さなど、目に浮かぶようではないか。このコンビの将来に更なる期待を抱かせる粋な計らいだった。