2018/1/12
新日本フィルハーモニー交響楽団 第582回定期演奏会
@すみだトリフォニーホール

ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ「踊るミューズ」
J. シュトラウス2世:ポルカ・シュネル「狩り」
J. シュトラウス2世:ワルツ「東方のおとぎ話」
J. シュトラウス2世:歌劇「騎士パズマン」より チャールダーシュ

J. シュトラウス2世:ロシアの行進曲風幻想曲
J. シュトラウス2世:ワルツ「加速度」
エドゥアルト・シュトラウス:ポルカ・シュネル「電気的」
J. シュトラウス2世:ポルカ・マズルカ「女性賛美」
J. シュトラウス2世:新ピッツィカート・ポルカ
J. シュトラウス2世:ワルツ「北海の絵」
ラヴェル:ラ・ヴァルス

~アンコール~
J. シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」序曲

管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔文洙
指揮:上岡敏之

毎年恒例のニューイヤー・コンサートに続き、定期もニューイヤー?と言うなかれ。定期だからこそ実現出来た粋なプログラムであり、大いに意義があるものだろう。冒頭と〆にラヴェルの名品を置き、シュトラウス一家(あまり演奏されない作品も多く含む)の作品群を挟んでいる。ワルツやポルカ、行進曲など、様々な様式の音楽がずらりと並び、これらを聴き比べるだけでも楽しい。 
まずはラヴェル「高雅にして感傷的なワルツ」の精緻な弱音に痺れる。ピアノ曲から管弦楽に仕立てられたこの作品であるが、官能的な弱奏から華麗なトゥッティまで、あたかも一人でピアノを操るような自在な表情で奏された。上岡指揮の演奏会ではしばしばこのピアノのような自在さを感じるが、きっと本人がピアニストとしても優れた技量の持ち主であることに関係するだろう。 
続くシュトラウス一家のポルカ・ワルツ集では、性格の異なる作品が次々と奏され、「次はどんな音楽だろう?」と聴く者の興味をかき立ててくれた。仕上がりの見事さも定期演奏会ならではで、音響的な豪奢さよりも俊敏な表情の転換が活きる。とはいえポルカやチャールダーシュの熱狂も実に痛快だ。日進月歩の科学技術を物語るワルツ「加速度」やポルカ・シュネル「電気的」。その直後には、対照的な性格を持つポルカ・マズルカ「女性賛美」―選曲の順番も一つ一つ意味づけされている。シュトラウス一家の〆に奏されたのはワルツ「北海の絵」、これは堂々たる芸術作品としてその描写の妙を堪能した。メンデルスゾーン「フィンガルの洞窟」に通じる絵画的表現、と解説にあったが、むべなるかな。最後は再びラヴェルに戻り、上岡流の拘りが活きた「ラ・ヴァルス」。艶かしいポルタメントや木管楽器の呟きが徐々に昂まり、最後は猛烈な煽りの中に崩れ落ちる。アンコールはシュトラウス2世の「こうもり」序曲で、あまりにも有名なこの名曲においても独特の抉りの効いた表現は健在だった。 

1814年のウィーン会議以降、保守反動の一つの象徴として現れたワルツ文化。その全盛期を担ったシュトラウス一家の作品群と、ハプスブルク帝国終末期をフランスから眺め、過ぎ行く時代への哀感をワルツに託したラヴェルの作品群。この二者の対比により激動の時代の様相をも映し出す、名プログラムであった。