2018/2/8
新日本フィルハーモニー交響楽団 第584回定期演奏会
@サントリーホール 大ホール

ヴァーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」より 第1幕への前奏曲
ヘンツェ:ラ・サルヴェ・インカンタータ

ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」

管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:崔文洙
指揮:マルクス・シュテンツ

新日本フィルとマルクス・シュテンツの初顔合わせとなった2プログラムの後編・ジェイド(サントリーホール・シリーズ)では、職匠歌・メルヒェンというドイツ文化の重要因子にまつわる2作を取り上げ、音楽史上の革新である「英雄」交響曲で結ぶというプログラムが組まれた。ハイドン→ワーグナー→ヘンツェと文脈付けられてきた2プログラムの締めとして、満を持してベートーヴェンを配し、パズルの最後のピースを埋めるという流れも巧妙だ。 

まずは「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲だが、これがいきなり喜劇的性格を全開にした演奏で大いに驚いた。16型ながら重々しさは些かもなく、その快活な表情にはK.ペトレンコ/バイエルン州立管の名演(2016年ムジークフェスト・ベルリン客演時のアンコールだ)すら想起したほどだ。現代のワーグナー演奏を象徴するスタイルであり、かつ等身大の作品像を提案するものだろう。続くヘンツェ「ラ・セルヴァ・インカンタータ」は題の通り夢幻的な響きが横溢しており、かつ第3部はじめリズム処理の妙にも惹かれる。歌劇が原曲とあってか流れが良く聴き易い作品で、先日の「交響曲第7番」と同じ人物の作品とはにわかに信じ難い。 

そして後半のベートーヴェン「英雄」、これがここ数年の在京楽団によるベートーヴェン演奏の中でも随一の衝撃を与える強烈な名演だった。シュテンツはトパーズでのハイドン同様に完全対向配置を採り、全声部に常に大胆な揺さぶりをかけてゆく。フレーズの反復では声部バランスを頻繁に変え、アクセント・強弱も自由自在。どこまでがリハーサルで準備され、どこからが即興的な呼吸なのか分からないほどに指揮者とオケの共同作業ががっしりと一致している。スケルツォからアタッカで突入するフィナーレも凄まじく、シュテンツは新日本フィルを巨大な弦楽四重奏に変貌させたとすら断言できる。 

シュテンツとの初顔合わせは、間違いなく今季の新日本フィルのハイライトであろう。彼が得意とするヘンツェ音楽の一つの特徴は折衷主義的な面白さだが、シュテンツもまた伝統と革新を絶妙に折衷する技を持つ稀有な指揮者だ。是非とも再客演を実現させ、再び聴衆に新たな発見をもたらしてほしい。