たくさん聴かな、あかんやん。

都内在住私大生。自分の心に正直に書きます。

November 2010

どうもです。

やや季節はずれですが、今年のルツェルン国際音楽祭ではアバド指揮の祝祭管弦楽団により
マーラーの第9交響曲が演奏されましたね。

昨年は、同じくマーラーの1番、4番が演奏され、
うち4番はNHKでも放送されたので、印象に残っている方も多いかと思います。

気心知れた指揮者と楽団による、誠に伸びやかな秀演だったことが記憶に新しいです。
第1のDVDはすでに発売済、第4はもうすぐ発売になるようです。
さあ、アバド/ルツェルン祝祭管の新・マーラー全集も残す所、あと「第8」「第10」のみとなりました。

こんなところをふと考えていた時、何気なくルツェルン国際音楽祭のページを開いてみると・・・
おおおお!もう来年度のプログラムがアップされているではないですか!
こちらです。(気づくの遅かったかしら?)

ここで、気になるオーケストラ・コンサートをピックアップ。

8月10日、12日、13日
クラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団
ピアノ:エレーヌ・グリモー
ブラームス:ピアノ協奏曲第1番
マーラー:交響曲第10番より アダージョ


今年のオープニング公演。
常連グリモーとのブラームス、瑞々しい演奏が聴けそう!
今年のマーラーは10番のアダージョのみ。
ベルリン・フィルでは同年に全曲を指揮するはずなので、
リリースはそちらからなのでしょうか?

8月19日
クラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団
モーツァルト:交響曲第35番「ハフナー」
ブルックナー:交響曲第5番


アバドのブル5かぁ・・・あまり合わないような気がする。
とはいっても、ウィーン・フィルとの旧盤は未聴なのですが、
同じプログラムをハイティンクが振ったらなぁ・・・と思うとヨダレが(爆)
20日にはクリスティーネ・シェーファーの出演で、前プロのモーツァルトだけが変更になると思われます。

8月24日
ハインツ・ホリガー指揮シュトゥットガルト放送交響楽団
ヴァイオリン:トーマス・ツェートマイアー
リスト:暗い雲(ホリガー編)、災厄の星(ホリガー編)
ホリガー:ヴァイオリン協奏曲
シューマン:ヴァイオリンと管弦楽のための幻想曲、交響曲第1番「春」


ぬおぉ・・・ホリガー渋い。
自作や編曲物に加え、シューマンを2つと、かなり長めのプログラムではないでしょうか?
そういえば、ホリガーが最近名フィルに客演した時も、シューマンの1番を振っていましたね。お気に入りでしょう
か?また実力派ツェートマイアーの登場も嬉しい。

8月26日
クラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団アンサンブル
ブラームス:セレナーデ第1番(ホルヘ・ロッター編曲)←reconstructedというのは編曲でしょうか?
シェーンベルク:室内交響曲第1番


ブラームスのセレナーデはアバドのお気に入りで、ベルリン・フィルとの録音もあります。
シェーンベルクは昔からお得意ですね。

8月28日
リッカルド・ムーティ指揮シカゴ交響楽団
バーナード・ランズ:Danza petrificada
R.シュトラウス:交響詩「死と変容」
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番


マエストロ・ムーティが再びルツェルンに登場。
オケはもちろん最強集団シカゴです。
ショスタコでは第10、第11あたりが聴きたかったけれど、今回の5番、筋骨隆々とした演奏になるんでしょうかね。
なお、翌日にもヒンデミット、シュトラウスのプロで演奏会があります。

8月31日
サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
マーラー:交響曲第7番「夜の歌」


これまた最強集団ベルリン・フィルはマーラーで勝負。
夏休みの終わりをカウベルの響きで飾れ、ってか。
こちらも翌日に、ブル9をメインとする演奏会あり。

9月2日
ピエール・ブーレーズ指揮ルツェルン祝祭アカデミー管弦楽団
ラヴェル:組曲「クープランの墓」
メシアン:クロノクロミー
ブーレーズ:Éclat/Multiples
マーク=アンドレ・ダルバヴィ:Concertate il suono


現代音楽は門外漢。聴いてみたら面白いんですけどね。
ちなみに、2011/12年のシーズンで都響もブーレーズのÉclat/Multiplesを取り上げます。
(野平一郎または杉山洋一の指揮)
このコンビは他にも2プログラムほど披露。

9月4日・5日
アンドリス・ネルソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
4日
ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲
R.シュトラウス:楽劇「サロメ」より 7つのヴェールの踊り
ショスタコーヴィチ:交響曲第8番
5日
ピアノ:イエフィム・ブロンフマン
ベートーヴェン:「アテネの廃墟」序曲、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェヘラザード」


これは面白い!!師匠のヤンソンスでなく弟子のネルソンスに率いられるコンセルトヘボウ管。
指揮ぶりはそっくりですが、果たして音楽はどうなのか・・・。

9月9日
クリスティアン・ティーレマン指揮ザクセン・シュターツカペレ・ドレスデン
ブルックナー:交響曲第8番


ぬぉぉぉ!!極めつけ。と同時にまたかい。
でも世界最高の音響を誇るルツェルンでこそ聴きたいですなぁ・・・。
2012年の来日公演でも同曲やってほしい。
翌日、ブゾーニ、プフィッツナー、ブラームス等を演奏。

9月15日
リッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」 序曲とバッカナール
ブルックナー:交響曲第6番


ブル6は、コンセルトヘボウとの名盤がありますね。期待大。

他にも、
・ハーディング指揮マーラー室内管の「魔笛」(演奏会形式、合唱はアルノルト・シェーンベルク合唱団!)
・ハイティンク指揮ヨーロッパ祝祭管のブラームス特集
・デュトワ指揮フィラデルフィア管の「幻想」
・ホーネック指揮ピッツバーグ響の
・メータ指揮イスラエル・フィルのチャイコフスキー特集(レーピンのヴァイオリン協奏曲含む)、舞曲特集(締めは「ボレロ」)
・ルツェルン響のブリテンのオペラ
・ユロフスキ指揮ロンドン・フィルのスクリャービン他(ヴァイオリン:ユリア・フィッシャー)
・ウェルザー=メスト指揮ウィーン・フィルのドヴォルザーク他のプロ、シュトラウス他のプロ
・ネゼ=セガン指揮ウィーン・フィル(「未完成」「ダフクロ」他)
・バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリンのブルックナー他(バレンボイムはモーツァルトを弾き振り)、ワーグナー:楽劇「ワルキューレ」第1幕(演奏会形式)とノタシオン(!!)
があります。

本当にプログラム数が多い・・・これオケだけですよ。
スイス人は羨ましいです。

ではでは。

2010年11月17日(水) 18:00開場 18:45開演 @愛知県芸術劇場 コンサートホール
第28回名古屋クラシックフェスティバル


管弦楽:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
指揮:マリス・ヤンソンス


ベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第3番
ヤナーチェク:狂詩曲「タラス・ブーリバ」
---休憩(20分)---
チャイコフスキー:交響曲第4番
~アンコール~
チャイコフスキー:バレエ組曲「眠れる森の美女」より パ・ダクション-アダージョ


まず公演とは関係の無いことですが、
首席ヴィオラの波木井賢さんがホール前でふっつ~に携帯で話してらっしゃいました。
あまりに普通すぎてびっくり・・・

メータ/イスラエル・フィルに引き続き、海外オケの公演。
こう連続的に素晴らしい演奏を聴いていると、国内オケでは満足出来なくなりそうで怖いです・・・あの都響も。

ウィーン・フィル、イスラエル・フィルに大いに感動して、「いや~、世界トップクラスはやはり凄い」と感じ入っていた今日この頃だったのですが、今回のコンセルトヘボウの公演には完全に度肝を抜かれましたね。

・・・とにかく、完璧なオーケストラ。昨夜の演奏を録音していたとしたら、すぐに発売可能だ思います。

弦、木管、金管、打楽器・・・比類しがたい技量と音色。
あのベルリン・フィルでも、ややもすれば音色が汚くなりがちな楽器であるテューバすら美しい。
これほど美しいテューバを私は聴いた事がありません。トロンボーンとの音量バランスの面でも完璧。

また、ヤンソンスの人気も相変わらず凄いですね。演奏前にブラヴォー飛んでましたよ。

まずはベートーヴェンの序曲ですが、本当に素晴らしかったですよ。音楽の推進力といった点では、これこそが今日随一の出来だったと言えるでしょう。
「名門」と呼ばれる団体でも、エンジンがかかるのが遅い所は結構ありますが(ウィーン・フィルなど、気に入らない指揮者の時はもう・・・遅い遅い!)、コンセルトヘボウ管、第1曲から気合入りまくりです。
決して怒号せず、威風堂々とした演奏で、硬めのマレットで叩かれたティンパニがいい味出してました。
特に、例の主題がヴァイオリンのトレモロで現れる箇所や、展開部のフルートの難所の、包み込まれるような温かさは、このオケの伝統がものを言っていましたね・・・絶美。
また、トランペットのソロの前で音楽が休止するあたりのヤンソンスの指揮が、「如何にも」といった感じで楽しかった。

この曲が終了した時点でボルテージは俄然上がります。

さて、お次はヤナーチェクの代表作「タラス・ブーリバ」。残念ながら演奏機会は多くないよう。
チェコ国民楽派の中でも、モラヴィアの生んだ大作曲家、レオシュ・ヤナーチェクは一味も二味も違いますぜ。
何といっても、「発話旋律」の研究に力を注いだ彼の音楽は、チェコ語の抑揚を再現していると言われています。つまり、チェコ語(難しい!)が分からない私(達??)にとっては難解に感じられることも多いです。
しかし、以前「ブロウチェク氏の旅行」(日本初演)を聴いた時には、確かにやや難解な外面の中に脈々と流れるヒューマニズムには、他のボヘミアン・コンポーザー達にある種通じるものを感じましたので、「今回も楽しめるはず!」と、期待していました。

・・・予想通りの演奏。
結構ソロ箇所の多い曲だけに、ソリスト揃いのこのオケにはぴったりでしたね。安定感抜群。
また、第1曲冒頭では、トゥッティ(チューブラーベルの連打も印象的)と直後にオルガンの弱音の対比が美しい。
この箇所はもう耽美的で・・・うっとり。ちなみにポジティヴオルガンが使用され、音はホール据付のオルガンから出ていました。やや薄いですが、いい音色でしたよ。

第2曲ではトロンボーンがバシバシとリズムを決め、爽快!思わず「ティル」を思わせる最後のクラリネットソロもあり得ないウマさ。何だかこの一連の箇所は「幻想」の4楽章っぽいですね。後、ハープもお見事!
第3曲では、再現部の前のティンパニの強打が完璧かつ豪壮でポイント高かったです。

そしてその後は捕縛されたタラス・ブーリバの予言ですが、パイプオルガンの重厚な響きも加わり、如何にもボヘミアンな、ロマンティックな旋律をヴァイオリンが高らかに歌い上げます。
ちなみに、今でこそ「ボヘミアン」と思えますが、最初この箇所を聴いた時は「中国の二胡っぽい?」と思ってしまいました(爆)。ヴァイオリン・ソロの後は、徐々に音量を上げて大団円。ノイマン盤は最後のティンパニの一打のほんの少ぉし後に切り上げていますが、ヤンソンスはティンパニが打たれると同時に振り切りました。
ブラヴォー。
ヤンソンスは終始楽譜を見ていたようで、彼の個性はあまり感じられず。純音楽的だったということかしら?
彼のレパートリーは相当広いはずですが、流石にヤナーチェクまで自家薬籠、というわけにはいかないですよね。
(ちなみに、予習したディスクはノイマン/チェコ・フィルのもの)
演奏会を後にした聴衆で、この曲が好きになった方も結構おられるんじゃないかと勝手に推測します。

さぁて、休憩後はチャイコフスキーの第4交響曲。
これこそ、ヤンソンスの自家薬籠のレパートリーですよ。楽譜はおいてなかった・・・かな。
かつてムラヴィンスキーの代役としてレニングラード・フィル日本公演でこの曲を振っていましたが、その時(86年)と比べると、段違いに風格があります。自身満々。
冒頭のホルンの斉奏はどうやって振るのだろうか、と見ていましたが、彼の両手は休符を早めに切り上げて次の音符へと移行していました。(テューバに感動したのはこの後に金管全部が加わって吹奏するところ)
この楽章では、ロシアの凍てついた大地を思わせる低弦の重厚な響きが印象的。

第2楽章では、冒頭のオーボエ・ソロが完璧なのは勿論(顔を真っ赤にしていましたが、出てくる音は余裕そう・・・降参です)、ファゴットによるややユーモラスな第2主題の提示(3月にインバル/都響の同曲の演奏は、グロテスクになりかけでしたが)の後、弦がトゥッティで同主題を奏でますが、ここは本当に痺れました。寥々とせず、どこまでもぶ厚い響きの嘆き節には、鳥肌が立ちました。しつこいようですが、何というパワーのオケでしょうか。

第3楽章では、ヤンソンスの芸達者ぶりが笑える。指揮棒は持たず、手で指揮しましたが、手ですら殆ど指示をせず、クレシェンドする楽器の方に体をゆっくりと傾けたり、ダンスするような仕草もありました。
ただ、終盤の管と弦の掛け合いはきちんと指揮棒で指示していました。転換が早い指揮者ですね。
インバルもこの楽章ではユーモラスでしたから、指揮者はこの楽章で踊る(?)のが好きなのかもしれません。

そして、アタッカで終楽章・・・と思いましたが違った。ここは絶対アタッカでやって欲しいなぁ・・・。
フィナーレは大迫力の演奏。管楽器をやたらと咆哮させることなく、弦楽の刻みを正確に打ち出して構築性豊かに仕上げていました。ティンパニ・シンバル・バスドラの連携とこれまた手本のような音色も最高。
この楽章でも、ヤンソンスは目立った指示は少なかったですが、「運命の動機」回帰後はややアッチェレンランドをかけ、最後は程よく伸ばして堂々たる終結。
今日の聴衆はフラブラなしで、かつ反応も至極熱狂的で良かった。またもやブラヴォー連発。ノドが・・・(笑)

熱狂的なカーテンコールの後、アンコールはチャイコフスキー「眠れる森の美女」よりアダージョ。
冒頭のハープの煌きもさることながら、弦楽器に綿々と歌わせ、まさにヤンソンスのやりたい放題の演奏。
ロシア~ンな雰囲気がホールに満ち溢れました。
楽員さんが楽譜をめくっていたので、もう一曲用意はあったようですが、ヤンソンスとコンマスが何やら話していましたので、相談の上やらないことにしたのでしょう(東京公演でも全く同じだったよう)。
それでもなお聴衆は拍手を送り続けました。終いにはヤンソンスがコンマス・弦の首席と固く握手を交わし、立ち上がった楽員もヤンソンスに拍手を送るという幸福な場面も。このコンビの信頼の強さをうかがわせます。

そして、やっとお開きになり、楽屋口に走ります。前回のメータの際はサインを頂けなかったので、少し不安だったのですが、待つこと小一時間、ややお疲れのご様子でしたが、マエストロは出てきてくださいました。
プログラムにサインを頂戴しましたよ。
20101117_002

再来年は、さらにコアなプログラムを携えて、また来日して頂きたいです。
う~ん、シューマンの2番とか、ショスタコの10番とか・・・メジャーだけどザ・グレイトなんていうのもいいかも。
名古屋でマラ6なんて聴けたらもう僥倖ですね。

良い演奏会でした。

2010年11月9日(火) 18:00開場 18:45開演 @愛知県芸術劇場 コンサートホール
第28回名古屋クラシックフェスティバル


管弦楽:イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ズービン・メータ


ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
---休憩(20分)---
マーラー:交響曲第1番「巨人」
~アンコール~
ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ「雷鳴と稲妻」


演奏者、聴衆の双方にとって、超重量級プログラムですが、
流石はメータ&イスラエル・フィル、充実した演奏を披露してくれました。

ハルサイ&巨人、どちらにも共通して言えることは、メータの指揮の流れの良さです。
メータは、細部にはあまりこだわらず、大河の奔流のごとく音楽を畳み込んでゆくスタイルで
一貫していますが、近年の彼の円熟によって、そのスケールはさらに増しており、
ピリオド奏法が叫ばれて久しい近年では珍しいほどの、聴き応えのある音楽を聴かせると言われます。
今回の演奏で、僕もその思いを確かにした次第です。


会場に入ると、大勢の演奏者がステージ上で練習をしており、かなり賑やか。
編成は、5管編成の巨大オーケストラで、2セット(高音のピッコロ・ティンパニ含む)のティンパニや大・小2種類のタムタム(銅鑼)など、多くの打楽器が並びます。
なお、ギロ等、数種類の打楽器は日本人の第2ティンパニ奏者が担当していました。経費節約でしょうか(笑)
メンバー表にもきちんと載っておられます。

そして、メータは指揮台に立つと、あっけなく『序奏』を振り始めました。
いきなりの難所であるファゴット・ソロは、超ヴィルトゥオーゾという程ではありませんが、巧い。
各楽器の掛け合いには、尋常でない雰囲気のロシアン・エロスを求めたくなるところですが、
少し当たり前すぎた感があります。もっとも、破綻は全くないのですが。
『春の兆しと乙女たちの踊り』に入ると、重心の低い弦楽器がザッザッザッ・・・と入ります。
リズムのメリハリは十分に付けられていますが、非常に余裕そうで、気品すら漂っていました。
そして、曲の凶暴化とともに、バスドラム・第1ティンパニが活躍します。
このオーケストラ、弦だけでなく、打楽器も凄まじい!!
変拍子のリズムを、正確無比にバシバシと叩き込んでくる上、
音色も硬めで、完璧な演奏でした。ブラヴォー!!
(ちなみに、バスドラのお爺さんが、楽器を傾けたり、青い布を被せたりと、忙しなかったです。
ホルンを初めとする金管群も、最強奏ではやや混濁も聴こえたとはいえ、
ブリリアントな音色で、素晴らしい吹奏でした。
第1部は中庸のテンポで、それほど噛み付くことなく終了。

第2部の、『いけにえの賛美』までの、静寂を生かした音作りは出色でした。
ミュートを付けた金管の、妖しいソロもいいのですが、
なんと言っても「乙女たちの神秘的な集い」の弦楽器のエロさ!
恐らくヴィオラだったかと思いますが、本当に頭がクラクラとするほど官能的でした。
また、驚愕したのがピツィカートの弱音!!
チェロがピツィカートでリズムを刻みデクレシェンドする箇所(『祖先の呼び出し』かな??)
の、聴こえるか聴こえないかの限界の音量でした・・・あの弱音は、確かな技量の証拠でしょう。感服いたしました。
さて、有名な「ス・ト・ラ・ヴィ・ン・ス・キ・ー・の・ば・か」の連打の後のアクロバティックな踊りも、
彼らは難なくこなして(『いるように見える』)いきます。
打楽器の乱打もますます激しくなっていき、視覚的にも圧倒される中、
最後のピッコロの断末魔の叫びの後、メータは一瞬間をおいて曲を結びました。

この曲は完全に彼らの手の内に収まっているのでしょう、見事に彫琢された、シンフォニックな解釈。
ただ、演奏中にトランペット奏者の一人がミュートを落とすというハプニングあり。
こちらのブログで触れられているように、以前もこういうことがあったようですから、困ったものです・・・。

さて、休憩を挟んでマーラーの「巨人」。
ストラヴィンスキーでもオケは結構鳴っていましたから、果たしてスタミナが持つんだろうか・・・と
心配でしたが、流石はイスラエル・フィル。前プロを凌駕する名演を聴かせてくれました。
(ちなみに、「巨人」は初ナマです)
冒頭のフラジョレットは残念ながらイマイチでしたが、音楽が動き出すともうたまりません。
クラリネットのカッコウ動機、トランペットのバンダの技巧、チェロが導く『朝の野辺を歩けば』の旋律・・・
理想的な演奏でした。
曲が進むにつれて自然な感興が沸き起こり、クライマックスのホルンの咆哮も凄かった!
第2楽章として挿入された「花の章」では、メータが大きく感情を露にし、弦楽器を濃密に歌わせました。
今日、弦楽器の魅力が最高潮に発揮されたのは恐らくこの楽章でしょう。
第3楽章のスケルツォも甲乙付け難い。本当に弦が素晴らしく、理想の名演でした。
ただ、フレールジャックの葬送行進曲は、ちょっと表情付けが単調だったかなぁ・・・。無難な出来。
そして訪れるフィナーレでは、メータは思いっきり暴れるかと思ったのですが、枯れてしまったか(?)、あまりアクションは無かったです(勿論、決め所では腕を振り回してましたが)。
ただ音量は凄くて、最強奏では太陽のごとくさんさんと輝きます。オケとしての一体感を感じました。これも、マーラーを聴く醍醐味の一つですね。
欲を言えば、フィナーレでは起立して欲しいのと、もう少しだけ金管の音量が欲しい。
あまり第1楽章と変っていませんでしたから、何か突き抜けた印象が足りないんだと思います。

とはいえ、満足の演奏。客席もまれに見る熱狂振りで、私もブラヴォー何発か献上してまいりました。
アンコールの「雷鳴と稲妻」も堂に入った演奏。管楽器の名人芸が光ってましたね(特にボーン)

(ちなみに、今回の日本公演ではウィーン気質・雷鳴と稲妻・ホヴァンシチナ前奏曲など多くのアンコールを用意していた模様。お疲れ様でした!)

イスラエル・フィルは、弦を筆頭に大変優れたオーケストラですが、
メータの指揮に慣れていることもあるのでしょうか、やや表情が淡彩です。
また、問題点として演奏中にガサゴソと楽員自身(特に金管!)が音を立てている。このように、音に対する微妙な心遣いが出来ないのでは、当然演奏もがさつになって行くのではありませんか?
こういう小さなことが、楽団全体の綻びに繋がるかもしれませんから、是非とも改善願いたい。

一方のメータ、録音だと(特にEMI)鈍重で、?なのですが、ライヴはやはり素晴らしいですね!
フレーズ間の微妙な間の取り方が非常にウマいんです。メリハリがよく付いている。

色々書きましたが、いい演奏会でした。
学生券(B席→3000円!!)さえ買えれば、また行きたいと思います。

2010年11月6日(土) 14:15開場 15:00開演 @兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

148729_167734589912766_1000002867_3

開館5周年記念事業
Daiwa House 55th Anniversary Special
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ジョルジュ・プレートル

シューベルト:交響曲第2番
---休憩(20分)---
ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
~アンコール~
ブラームス:ハンガリー舞曲第1番
ヨハン・シュトラウス2世:トリッチ・トラッチ・ポルカ


聴けて、本当に良かった。
老巨匠の勇姿を、しかと目に焼き付けてまいりました。

148729_167734589912766_1000002867_4

会場である兵庫県立芸術文化センターは、初体験のホール。
2005年オープンで、このウィーン・フィル公演が開館5周年事業ということから分かるとおり、
非常に清潔感あふれる、真新しいホールです。

148729_167734589912766_100000286797

ホールには2006年、昨年来日した際のウィーン・フィルのパネルが掲示されていました。
アーノンクールのブル5と、メータのヘルデンレーベンですね。

148729_167734589912766_100000286797

相変わらず、コンマスを先頭に入場してきました。
参考までに、確認できた今年の主要来日メンバーを記しておきます。
コンマス:キュッヒル
フォアシュピーラー:シュトイデ
チェロ:ヴァルガ、バルトロメイ
コントラバス:マイヤー
フルート:ミュラー
クラリネット:オッテンザマー息子
ティンパニ:ミッターマイヤー
他は知りません(笑)

さて、前プロはシューベルトの交響曲第2番。
―まず、第1音が鳴った瞬間、感動しました。
ああ、これがウィーンの音なのか、と。
神々しく、厚みある、ふんわりとした音色。
明らかに、他のオケとは違いました。

プレートルは勿論全曲暗譜ですが、日本公演の初日ということで少し緊張していたのか、
初めのうちは神経質そうに拍を小刻みに取っていました。
やがて、ウィーン・フィル(初期作品にしては大きな編成!)の美音を最大限に活かし、
この可愛らしい佳曲を愛でる様に、しかし豊麗に響かせるようになっていきました。
シューベルトの2番を予習なしで、このコンサートで初めて聴く人は、
まさか18歳の作品とは思えないでしょうねぇ。

最も素晴らしかったのは第1楽章。
序奏部~主要主題の登場までの、これ以上ないほど滑らかで、緊密な弦のアンサンブル。
包み込まれるような、温かな空気感は、このオケにしか創出できないでしょう。
内声部の響きも充実しており、プレートルも弦と管楽器のバランスや受け渡しを、要所要所で指示していました。
ちなみに、緩徐楽章では、プレートルはコンマスの譜面台にタクトをしまい、両手で指揮しました。
これはメインのベートーヴェンでも同様です。
快速テンポの一筆書きで描かれた第4楽章も、愉しさの極み。

休憩後、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」
プレートルは、この曲をR.シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」との組み合わせ(!)で、
ウィーン・フィルと昨秋演奏していますので、手馴れたものだったのでしょう。
2管編成・16型でしたが、本当なら8名いるはずのコントラバスが7名・・・。
一番辛いのは、本国にいらっしゃるご家族でしょう。ご冥福をお祈りいたします。

全曲を通して重厚なスタイルで、第1楽章のトランペットも最後まで吹かせていました。
勿論、プレートル・マジックが至る所に仕掛けられているのですけどね。

冒頭の2つの和音は、思いのほか壮麗に始まりました。
「ザン・ザン」ではなく、「ジャーン・ジャーン」といった感じです。
しかしそれも束の間、主部に入るとテンポを上げ、一気呵成に突き進んでいきます。
途中、ホルンがソロでほんの少しつまづいたほか、ウィーン・フィルはまだ少し硬い感じがしました。

第2楽章の葬送行進曲は、前楽章とテンポはほとんど変りません。
弦楽の美しさに本当に聴き惚れましたが、最強奏の壮絶さは、流石に劇場人プレートルといったところでしょうか。
オーボエのソロ(良かった!)を初め、木管も切実な音色で訴えかけます。

続いて、第3楽章。オケは、第2楽章で完全に本調子を取り戻したようで、それを見抜いてかプレートルも拍は取らず、音楽の流れやディテールを全身で激しく表示するいつものスタイルになっていったように見えました。
壮絶な主部に続き、トリオ(中間部)のホルン三重奏では、4本の(楽譜指定では3本ですが)
ウィンナ・ホルンの高らかな吹奏に体を任せました。
プレートルはここで大きくテンポを落とし、音色を存分に味合わせてくれました。これぞ最高の耳の贅沢・・・。

雪崩のようにスケルツォは通り過ぎ、楽譜をすばやくめくったかと思うと、アタッカでフィナーレへ。
重厚かつ奔流のような勢いで、序奏が激しく奏された後は、ピツィカートの箇所ですが、
ここにもプレートルは魔法を仕掛けました。ピツィカートに濃厚な表情づけをしていたのです。
チャイコフスキーの4番の第3楽章もそうですが、どうもピツィカート奏法にはチャーミングな効果があるようで、
プレートルはそれを最大限に活かしたという所でしょうか?人間的で、本当に愉しかった。
その後も、テンポの緩急を大きくつけて、情熱的な演奏を繰り広げましたが、
作品を演奏が超えてしまうことはなく、下品とのギリギリのバランスで名演を産み出すプレートルを見て、これぞ現代最高、いや史上最高の巨匠だと確信。曲の最後に近くなると、体中をぶんぶんと振り回し、ものすごいエネルギーを撒き散らしながら、ウィーン・フィルのテンションも最大限に煽り立てました。
そして、いよいよやって来たコーダでは今まで以上に大きくブレーキをかけ、ホルンを思いっきり強調し、最後は弦を豊満に鳴らして、威風堂々と曲を閉じました。

残響がホールに鳴り渡った瞬間、嵐のような大拍手とブラヴォー。
プレートルは指揮台から一歩下がり、終始笑顔で盛んに奏者を労っていました。
数回目のカーテンコールの後、プレートルと一緒にトロンボーン奏者・打楽器奏者が舞台に登場、
プレートルお得意の、ブラームス「ハンガリー舞曲第1番」が始まりました。
これはもう、完全にプレートルのやりたい放題の音楽で、先ほどの「英雄」以上にテンポの変化は自由自在。
その湧き上がる情熱に、ウィーン・フィルも必死で反応していましたが、弦は所々で崩壊しかけていました(笑)!
やがて、ますますヒートアップした会場に再びプレートルは登場し、シュトラウス2世の「トリッチ・トラッチ・ポルカ」。
(ちなみに、ここで初めてトロンボーン登場。音色がぐっと厚みを増します)
2008年のニューイヤーでも披露したこの曲、もう何も書くことはありません。ただただ、黄金の音色。
今、その2008年のDVDの名演を聴いて、過ぎ去った時を懐かしんでいます。


プレートル・・・本当に凄かった。こんな極東の島国へ、はるばるやって来てくれて、本当にありがとう。
終演後の長大な出待ちの列にも、嬉々と対応してくださった。巨匠の至芸に、皆酔いしれていましたよ。
やはり、とても86歳とは思えぬ身のこなしの軽さ。これからも、健康を大事にしつつ、ずっと活躍して、
ニューイヤーも振って欲しいし、願うことなら、このコンビでまた来日して欲しいな。

空前絶後の、草書体の「英雄」でしたが、こんな演奏が出来るのは、絶対にプレートルだけです。
繰り返しになりますが、本当に、本当に聴けてよかった。
今回の演奏会に行かせて下さった両親、そして協力者の方々にも深く感謝いたします。
また同行した友人も、十二分に楽しんでいたようでした。めでたしめでたし。

10日のサントリー公演は、NHKが収録しないのが本当に惜しまれますが、きっと残響も相俟って名演になるでしょうね。行かれる方、楽しんでください。

このページのトップヘ