2012年4月30日(月・休) 14:00開演 @東京オペラシティ コンサートホール


新交響楽団 第217回演奏会


伊福部昭:交響譚詩
イベール:祝典序曲

---休憩(20分)---

マーラー:交響曲「大地の歌」

アルト:福原寿美枝
テノール:福井敬
管弦楽:新交響楽団
指揮:飯守泰次郎



1956年創立の伝統を誇るアマオケ界の名門、新交響楽団の演奏を初めて聴いてきました。

近年では高関健さんがマーラーの7番を振ったり、今回の飯守さんがブルックナーを振ったりと、大曲を盛んに取り上げて話題をさらっていました。
私が大の大曲好きというのも相俟って、是非このオーケストラを聴いてみたいと思っていましたところ、このゴールデンウィークに飯守氏が「大地の歌」を振る!これは必聴であろう!ということで聴きに行った次第です。
結果、予想以上の秀演に驚嘆!本当にびっくりです。
前半、第一曲目の伊福部は生では初めてでしたが、いきなりのハイテンションモード。
コーホー御大の「切れば血が出るような響き」とはまさにこのこと。1楽章はソナタ形式に則って書かれていますが、そんなことはどこかに吹き飛び、狂瀾怒濤の音の波に体を任せるのみです。飯守氏も結構な御年のはずですが、その独特な指揮から噴出されるエネルギーはとどまることを知らぬかのよう。パーカッション群の体当たりの熱演が印象的。
2楽章は曲の進行とともに熱を帯びてきます。非常に民俗的なサウンドで、日本人としての魂を揺さぶられる思い。

続いてのイベールは、ご存知近代フランスの作曲家。さぞ軽妙な音楽かと思っていましたら、複雑巧妙にして重厚な構成の音楽。ちなみにこの曲、日本政府が皇紀2600年の祝賀のため、イギリスはブリテン、ドイツはR.シュトラウスなど、ヨーロッパ各国を代表する作曲家に委嘱した曲の一つ。フランス代表がイベールということですね。
冒頭、打楽器の強打に続き金管のファンファーレが現れ、その後もかなり動きのある音楽が続きます。あまり好きにはなれませんが、弦楽の重厚な音色が実によく合うあたり、他のフランス音楽とは一線を博しているといえましょう。

いやぁ・・・
既に前半でこのオーケストラの能力の高さには舌を巻いてしまいました。
弦楽器は厚みのあるサウンドを出し、管楽器群も安定の吹奏。
これで「大地の歌」が後半とくれば期待するなというのが無理というものです!
そういえば、本日はインバル/都響による同じ「大地の歌」の絶美の名演からはや1ヶ月。
この世界は無常なもの。。。そんなことを考えているうちに、ソリストお二人・飯守氏が入場。

冒頭のホルンの咆哮から、全く迷いのない音色。飯守氏の豪壮かつ甘美なリードのもと、オーケストラは見事なマーラー・ワールドを展開。すごい!そして見事なのは福井敬氏の熱唱。やや一本調子な場面はありましたが、天馬空を行くような美声で、大オーケストラを軽々と飛び越えホールに響き渡ります。(決してオケの音量がなかったわけではなく、むしろかなり鳴らしていたと思います) 声量だけで言えば、先月のギャンビルは敵ではありません。
一方、偶数楽章のアルト福原氏は残念ながら満足の行く歌唱ではありませんでした。
かなり朗々と歌っていましたが、むしろこの曲は先月のフェルミリオンのようなリート的要素が多く、声量の大きさ如何よりもまずは表現力が求められます。この点、福原氏の歌は変化や陰影に乏しく、歌詞の情景が浮かぶには至りませんでした。やはり母語話者ではないとこの曲は酷ということか?もっとも、巧さという観点で言えば第4楽章の若馬の疾走など、安定していましたし、「告別」では流石に感動しましたが。
話がアルトの方に脱線しましたが、やはり一番素晴らしかったのはオーケストラ!
飯守氏はヴァーグナー指揮者として名を馳せていますが、それも納得のロマンあふれる解釈。インバルも近年はロマンティックな音楽を作りますが、それでも彼はガッチリとした構成力が一番の魅力です。一方の飯守氏は、あくまで自然体の音楽。それでいて退屈とは無縁で、推進力と慈愛の念が溢れる指揮、実に見事!告別のラストでは弦にかなりキューを出して、感動的な音楽を創出していました。(ただ、この楽章はインバルのように緊密に構築してくれた方が聴ける気がします。長大なので)
オーケストラはこの曲でも殆ど完璧でしたので敢えて何も書きません。各人のソロも多い曲ですが、オーボエやフルート、トランペット等皆さん巧すぎ!


と、素晴らしい演奏会となったわけですが、ただ一つ非常に残念だったのは聴衆です。アマチュアだから客層が違う、といえばそれまでかもしれませんが、かなりマナーが悪い。ピアニッシモ箇所で平気で物を落とすわ、大音量でクシャミをするわ。デリカシーの欠片もありません。
こういった人達とは一緒の空気を吸いたくないですね。非日常の空間が台無しです。

とはいえ、総合的には非常に充実した時間を過ごさせていただきました。是非また聴きに行きたいと思います。次回は飯守氏の「巨人」!う~ん、聴きたい!!