東京交響楽団 第44回川崎定期演奏会
14時開演@ミューザ川崎シンフォニーホール
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
シューベルト:交響曲第2番
-アンコール-
シューベルト:劇付随音楽「ロザムンデ」より 間奏曲第3番
管弦楽:東京交響楽団
コンサートマスター:グレブ・ニキテイン
ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
指揮:ユベール・スダーン
スダーン/東響の10年間に及んだ共同作業も、今回で一区切り。
在任中あまり聴く事ができなかったが、すばらしいコンビであった。
退任公演は実に簡素な曲目ながら、「これで充分!」といわんばかりのプログラム。彼らの10年を象徴するような組み合わせだ。信頼厚いオピッツの登場にも納得が行く。
まずは皇帝だが、ややホールの容積が大きすぎた感がある。ピリオド奏法を採用しながらも力強いベートーヴェンの響きだが、如何せん3階では音が遠い。スダーン/東響は第2楽章での幽玄な表情など、伴奏の域を超えて繊細な音楽作りをしていただけに、いささか残念だ。オピッツは安定感抜群。
私は聴いていないが、一時期このコンビの看板であった「シューベルト・ツィクルス」。後半はその中から2番の再演となる。
シューベルトの2番は、プレートル/WPh来日公演での奇跡的なまでの美演を経験済みなので、どうしてもハードルが高くなってしまう。今回の演奏は素晴らしい完成度であり、全曲通して彼らの到達した境地の高さを思い知らされたわけだが、その感動は自分の心にまでは降りてこなかった。
この曲は素朴にして可愛らしい、愛撫したくなるようなメロディがそこかしこに散りばめられているのだが、スダーンは寧ろ筋肉質な解釈。リズムをどっしりと構え、その枠の範囲内で工夫を施すといった具合だ。何度も例に出して恐縮だが、プレートルは根本となる枠すら揺り動かしながらとにかく歌いまくるという稀有な演奏であった。
それでも、第2楽章での繊細きわまる旋律美や、コンマスのソロを取り入れた第3楽章など、あっと驚くような場面も多々あった。日本のオーケストラが演奏するシューベルトとしては最高峰に位置づけられることは疑いないだろう。
喝采の中、スダーンは公演直前に急逝した若きチェロ奏者を偲び、ロザムンデの間奏曲を演奏すると告げた。今回の演奏ではこれが一番の収穫だったかもしれない。「時よ止まれ、お前は美しい」そう声をかけたくなるような絶美の瞬間であった。
次回スダーンの登壇は5月。震災で中止された演目を含むこだわりのプログラムを、どう魅せてくれるであろうか。
14時開演@ミューザ川崎シンフォニーホール
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
シューベルト:交響曲第2番
-アンコール-
シューベルト:劇付随音楽「ロザムンデ」より 間奏曲第3番
管弦楽:東京交響楽団
コンサートマスター:グレブ・ニキテイン
ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
指揮:ユベール・スダーン
スダーン/東響の10年間に及んだ共同作業も、今回で一区切り。
在任中あまり聴く事ができなかったが、すばらしいコンビであった。
退任公演は実に簡素な曲目ながら、「これで充分!」といわんばかりのプログラム。彼らの10年を象徴するような組み合わせだ。信頼厚いオピッツの登場にも納得が行く。
まずは皇帝だが、ややホールの容積が大きすぎた感がある。ピリオド奏法を採用しながらも力強いベートーヴェンの響きだが、如何せん3階では音が遠い。スダーン/東響は第2楽章での幽玄な表情など、伴奏の域を超えて繊細な音楽作りをしていただけに、いささか残念だ。オピッツは安定感抜群。
私は聴いていないが、一時期このコンビの看板であった「シューベルト・ツィクルス」。後半はその中から2番の再演となる。
シューベルトの2番は、プレートル/WPh来日公演での奇跡的なまでの美演を経験済みなので、どうしてもハードルが高くなってしまう。今回の演奏は素晴らしい完成度であり、全曲通して彼らの到達した境地の高さを思い知らされたわけだが、その感動は自分の心にまでは降りてこなかった。
この曲は素朴にして可愛らしい、愛撫したくなるようなメロディがそこかしこに散りばめられているのだが、スダーンは寧ろ筋肉質な解釈。リズムをどっしりと構え、その枠の範囲内で工夫を施すといった具合だ。何度も例に出して恐縮だが、プレートルは根本となる枠すら揺り動かしながらとにかく歌いまくるという稀有な演奏であった。
それでも、第2楽章での繊細きわまる旋律美や、コンマスのソロを取り入れた第3楽章など、あっと驚くような場面も多々あった。日本のオーケストラが演奏するシューベルトとしては最高峰に位置づけられることは疑いないだろう。
喝采の中、スダーンは公演直前に急逝した若きチェロ奏者を偲び、ロザムンデの間奏曲を演奏すると告げた。今回の演奏ではこれが一番の収穫だったかもしれない。「時よ止まれ、お前は美しい」そう声をかけたくなるような絶美の瞬間であった。
次回スダーンの登壇は5月。震災で中止された演目を含むこだわりのプログラムを、どう魅せてくれるであろうか。