2015/1/30
モルゴーア・クァルテット 第41回定期演奏会
@東京文化会館 小ホール
ハイドン:弦楽四重奏曲第81番
ヴェーベルン:弦楽四重奏曲
シューベルト:弦楽四重奏曲第15番
~アンコール~
シューベルト:弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」 第2楽章より
モルゴーア・クァルテット
(ヴァイオリン:荒井英治、戸澤哲夫 ヴィオラ:小野富士 チェロ:藤森亮一)
F.J.ハイドン、ヴェーベルン、シューベルトの最後の弦楽四重奏曲を並べたプログラムで、しかもアンコールの死と乙女を含めてト長調縛りでもある。
それにしても、至近距離で聴くモルゴーアのサウンドは強烈だ。プログレでのワイルドさこそ影を潜めていたが、トゥッティの気迫溢れる合奏には目も耳も釘付けになる。予想していたとおり、オーセンティックなレパートリーでも総じて辛口で引き締まった演奏。
正直に言ってハイドンとヴェーベルンは全く馴染みがなく、シューベルトの15番が聴きたいがために買ったチケットだったが、果たして感銘度が大きかったのもこの曲だった。ほぼ同時期に作曲された「グレイト」とも共通する要素がある大規模な作品で、スケルツォはかなり似通った雰囲気がある。何ともいえぬ陰鬱さが漂い、後期ロマン派すら予見させる天才の作だ。モルゴーアのシリアスなサウンドともピッタリ合致し、緩徐楽章でも緊張の糸がピンと張り詰めていて聴く方は気が抜けない。合奏精度が「モルゴーアにしては」意外と高くなかったのは、多忙な4人ゆえに合わせが充分出来なかったのか。また1stVnの荒井さんがいつになくピッチが安定せず、一体どうしたのかと思ってしまった。体調が万全ではない?アンコールの死と乙女では柔らかな合奏が復活していた。
前半の2曲については殆どコメントできない。ハイドンは半分意識が飛んでいたし・・・。ただヴェーベルンのSQ、彼の作品の中ではかなり難解な部類の作品ではないか。
ところで、至近距離でこの団体を聴いて思ったのだが、中低音を豊かに支えるVaとVcの重要性は勿論として、高音域と中低音域をクッションする2ndVnの役割の弦楽四重奏における重要性を痛いほど認識した。2ndVnは普段下支えに徹しているのだが、一瞬前面に躍り出た時に実に美しいソロが与えられていたりするのだ。モルゴーアの戸澤さんは気迫こそ荒井さんには負けるけれども、擦弦楽器とは思えぬほど繊細で柔らかな美音の持ち主で、今日一番鳥肌が立ったのはD.887での彼のちょっとしたソロだった。