たくさん聴かな、あかんやん。

都内在住私大生。自分の心に正直に書きます。

February 2016

2016/2/28
sonorium 共催シリーズ2016『映像と音楽』
井上雅人 バリトンリサイタル Vol.5 夜の部
@永福町sonorium

ヴァーグナー:歌劇「タンホイザー」より "夕星の歌"
ヴォルフラム:井上雅人

ヴェルディ:歌劇「リゴレット」より "わしを呪いおった""似たり寄ったりが"
リゴレット:井上雅人
スパラフチーレ:佐藤由基

ラフマニノフ:真昼のように美しい彼女
ラフマニノフ:前奏曲 Op.23-4
ラフマニノフ:練習曲「音の絵」 Op.39-1
ピアノ:小瀧俊治

プッチーニ:歌劇「ボエーム」より "冷たき手を""箱馬車だって?...もう帰らないミミ"
ロドルフォ:村上公太
マルチェッロ:井上雅人


プッチーニ:歌劇「トスカ」第1幕、第2幕より抜粋
フローリア・トスカ:金持亜実
スカルピア男爵:井上雅人
スポレッタ:川出康平
堂守:佐藤由基
ピアノ:小瀧俊治
オルガン(電子ピアノ):玉崎優人
指揮:澤村杏太朗 

~アンコール~
メリカント:4つの歌 Op. 93より 第4番 人生に

バリトン:井上雅人
ソプラノ:金持亜実
テノール:村上公太、川出康平
バリトン:佐藤由基
ピアノ:小瀧俊治
オルガン(電子ピアノ):玉崎優人
指揮:澤村杏太朗 

尊敬するバリトン・井上雅人さんのリサイタル。昼夜2公演でメインに「トスカ」抜粋を置き、前半は違った曲目で挑むというヘヴィー級の構成を歌い切った井上さんに恐れ入った。「映像と音楽」というタイトルを冠するシリーズに相応しく、邦訳歌詞や作中の情景が壁面に投影され、ストレスなく音楽を楽しめる好企画に大拍手。スクリーンより自然で、しかも壁面が白いので特に不足もない。ごく親密な空間であるsonoriumだが、これによりオペラの魅力を十分に味わうことができた。
 
前半は「タンホイザー」「リゴレット」「ボエーム」にラフマニノフ歌曲と伊独露の名旋律を堪能。ピアノ小瀧俊治さんの目を見張るようなラフマニノフ独奏、ロドルフォの「冷たき手を」を高らかに響かせたテノール村上公太さん等、豪華ゲストの至芸も贅沢だった。「リゴレット」は苦悩するせむしの道化を井上さんが表情豊かに演じていた。「タンホイザー」も素晴らしかったが、昼夜2公演は流石に負担がかかるのか、一瞬ヒヤリとする場面も。

後半はキャストの皆さんが(簡素だが)しっかりと衣装を纏っての「トスカ」抜粋。衣装のほかにも小道具・背景画・観易く区分けされた字幕等、限られた空間を最大限に駆使することによりオペラならではの緊迫感が立ち現れた。こう思えたのも音楽面の見事さあってこそで、特に第2幕のトスカ金持さんとスカルピア井上さんの駆け引きは息を呑むような展開。いい演奏であればあるほどスカルピアのいやらしさが憎らしく感じられるのだが、今回もかなり見ていてイライラすることができた(笑)
劇的なプッチーニの後の清涼剤のようなメリカントの歌曲で、大充実のリサイタルは終演。井上さん、お疲れ様でした。

2016/2/28
東京都交響楽団 プロムナードコンサートNo.366
@サントリーホール 大ホール

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」
ドヴォルジャーク:弦楽セレナード

チャイコフスキー:イタリア奇想曲
ラヴェル:ボレロ

管弦楽:東京都交響楽団
コンサートマスター:四方恭子
指揮:大野和士 

音楽監督・大野和士がプロムナードコンサートに登場。この演奏会は前日のいわきプロムナードコンサートとの共通演目である。東日本大震災の後避難所になっていたいわきアリオスで、震災以来初めて実現した公演がギエムの「ボレロ」だったらしい。いわきの人々にとって特別な曲となった「ボレロ」を是非大野さんと都響で、という趣旨で曲目が決定したそうだ。

オーケストラは全曲14型。ベルリオーズ「ローマの謝肉祭」は冒頭から華やかで、フランスオケに比べると流石に強奏の力づく感はあるが充分豊麗な響き。タンブリン2対(倍タン?)で軽やかさも加わる。
ドヴォルジャーク「弦楽セレナード」は都響自慢の弦5部がブンブンと唸り重厚だが、この曲では感情の移ろいで魅せて欲しかったという思いも。本来は指揮者なし、もっと小さな編成で慈しむような響きを求めたいところだ。だがラルゲットの愛おしさは素晴らしかった。クオリティの高さは間違いない。

チャイコフスキー「イタリア奇想曲」は冒頭のファンファーレに続くロシアの旋律において、大野さんお得意の構えの大きなアプローチが功を奏した。こういった深刻な表情の音楽は、彼が最も得意とするところではないか。自在な伸縮が終結に向けて音楽の密度を高め、都響もよく付けた。
そして、スネアはじめ各奏者の自発性が遺憾なく発揮された「ボレロ」は圧巻。これを聴けただけでも収穫だ。前半は殆ど指揮者は振らないので、必然的にスネア・ドラムのテンポ感が曲の進行を左右することになる。西川さんのスネアは安定感抜群、次々と立ち現れるソロ群は皆さん達者で素晴らしい。どのセクションも難所だが、特にトロンボーンの小田桐さんは年齢を感じさせない甘くふわりとした音色。最後の最後で一瞬ヒヤリとしたが、実に美しいソロだった。このソロを超えてから輝きだす弦楽器は、弾力性あるフレージング。都響の水準の高さを見せつけた「ボレロ」だった。

この演奏会では、大野さんならではという箇所は上述した「イタリア奇想曲」位だろう。客席が意外と大人しかったのも何となくわかるような気がする。

2016/2/26
東京フィルハーモニー交響楽団 第874回サントリー定期シリーズ
@サントリーホール 大ホール

モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番
~ソリスト・アンコール~
ショパン:夜想曲第20番 嬰ハ短調 「遺作」

マーラー:交響曲第5番

ピアノ:小林愛実
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:チョン・ミョンフン

マエストロ・チョンの魅力満載、ということで前半のピアノ独奏をも弾くはずだったが、体調不良で代役の小林愛実さんに変更。彼女も一度ちゃんと聴いてみたかったので良いけれども。モーツァルトでソロを弾いた小林愛実の音色は青く淡彩、モーツァルトというよりはショパン向きの音色に感じられたが、会場の空気感を掴んだカデンツァや第2楽章では無垢な良さが活きた。アンコールの「遺作」には納得。終始背中を向けつつ、オケの入りを完璧に、かつ柔らかく合わせるマエストロは流石だ。

後半はマエストロお得意のマーラー5番。彼のマーラーは、昨年東フィルで聴いた「巨人」のロマンティックな熱演が示すようにやや時代がかったアプローチだ。その方針は、中期の第5番でも同じ。作曲家特有の凸凹を大量のアゴーギクというパテで埋め、威風堂々たるロマン派作品として聴かせる。鮮やかな手腕だが、些かワンパターンだ。現代の先鋭なマーラー演奏に慣れてしまうと、美しくオーケストラを鳴らすことに終始する彼のアプローチはやや食い足りない。もっとも、マーラー自身もオペラ指揮者だったのでこういった往き方は好んだかもしれないけれど・・・。
東フィルは弦の後方プルトまで渾身の熱演で、棒への徹底的な忠誠を強く感じる。金管は冒頭のトランペット独奏から実に見事だが、それにも増してホルンの高橋名人は伸びやかな音色・安定感共に向かう所敵なしでは。燃えた時の東フィルの凄さを思い知った次第。 

2016/2/25
新日本フィルハーモニー交響楽団 第555回定期演奏会
@サントリーホール 大ホール

フランク:交響的変奏曲
ラヴェル:ピアノ協奏曲
チャイコフスキー:交響曲第5番

ピアノ:アレクサンドル・タロー
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コンサートマスター:西江辰郎
指揮:エイヴィン=グルベルグ=イェンセン

以前には新国立劇場「トスカ」、読響での「レニングラード」が評判を呼んだイェンセン、今回は新日本フィルに登場。チャイコフスキーをメインとしながらも、やや渋いプログラムだ。

フランク「交響的変奏曲」は名曲だがなかなか演奏されない。シャイー/コンセルトヘボウ管とホルヘ・ボレットが演奏した盤が極上で、いつか聴きたいと思っていたのだがやっと聴けた。アレクサンドル・タローの玲瓏なピアノは打鍵の重みを感じさせず、滑らかに旋律を紡いでいく。フランス的なピアニズムを透明感だけで語ってはいけないが、彼は真にフランス的なピアニストと言えるのではなかろうか。構成を明らかにしつつ凹凸が表面的にならない(これは次のラヴェルでも一層際立った)。
フランクの晦渋とラヴェルの明朗という曲想の対照も楽しく、快速テンポを乗り切ってソロに付けたオケも充実していた。協奏曲2品でかなり満足。

後半のチャイコフスキー「第5番」、14型のオーケストラはイェンセンの変幻自在の指揮によく応えた。この人は基本的にオペラ指揮者なのだろうか、音楽の持って行き方の随所にそう感じさせる生々しい呼吸が感じられる。音楽の急減速・急加速はあざとさの一歩手前まで多用され、同じ動機を吹くオーボエには吹きながらベルアップさせたりと、木管群からも多様な響きを引き出す。まったく新しいチャイコフスキーが聴けた。新日本フィルは、冒頭の陰翳の濃いクラリネットが実に見事だったし、随所で指揮を先読みした熱演を披露。定期でチャイコフスキーの「第5番」と来れば、これくらい意義ある演奏を聴きたいものだ。

2016/2/23
コンスタンチン・リフシッツ ピアノ・リサイタル
@紀尾井ホール

ラフマニノフ:前奏曲 嬰ハ短調 Op.3-2「鐘」
ラフマニノフ:10の前奏曲 Op.23

ラフマニノフ:13の前奏曲 Op.32
~アンコール~
ラフマニノフ:前奏曲ニ短調(1917)
ショパン:前奏曲第15番 変ニ長調 
Op.28-15 「雨だれ」
ショパン:前奏曲第3番 ト長調 Op.28-3

ピアノ:コンスタンチン・リフシッツ

雪の降りしきる森から出てきたような感覚に捉われたリサイタルだった。
リフシッツの打鍵はかなり力強いが、ピアノとの相性も良いのか煩くは感じない。ラフマニノフならではの重厚な和音推移を一つずつ嚙みしめつつ進み、その演奏の堅牢さ、ゴーンと響く低音はロシアのバス歌手のようで圧巻。アンコールは3品。

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