たくさん聴かな、あかんやん。

都内在住私大生。自分の心に正直に書きます。

カテゴリ:音楽 > 雑談

まずは回数のまとめを。

ジャンル別もやろうかと思ったのですが、演奏会形式オペラや室内オケなど決め難いものが少なくないので中止。

また、登場頻度・来日頻度などに個人差があって不公平なので演奏家別もやりません。

 

【ホール別回数】

1位:サントリーホール(47回)

2位:東京芸術劇場(17回)

3位:NHKホール(13回)

4位:東京オペラシティ・コンサートホール(11回)

5位:すみだトリフォニーホール(10回)

以下、ミューザ川崎シンフォニーホール、東京文化会館、横浜みなとみらいホールなど。

 

【オーケストラ別回数】

1位:都響(26回)・・・安定の(笑)

2位:読響(17回)

3位:東響(16回)

4位:N響(13回)

5位:新日本フィル(11回)

以下、日本フィル、東フィル、神奈フィル、シティ・フィル、BCJ、群響、京響、紀尾井シンフォニエッタ東京。(アマチュア除く)

海外オケはイスラエル・フィル、リヨン歌劇場管、モントリオール響、マリインスキー劇場管、スイス・ロマンド管、トヨタ・マスター・プレイヤーズ, ウィーン(←これは微妙?)。

 

【総計】151回

 

 

以下、今年特に感銘を受けた公演を20位から順に発表します。

あくまで「極私的」ランキングであるという点ご了承下さいませ。

 

【第20位】

6/26  モルゴーア・クァルテット 第40回定期演奏会

渇望のニューアルバム『原子心母の危機』ライヴ

@浜離宮朝日ホール

 

リゲティ:弦楽四重奏曲第2番

ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第13番

ピンク・フロイド:原子心母

キング・クリムゾン:レッド

イエス:危機

 

モルゴーア・クァルテット

(ヴァイオリン:荒井英治、戸澤哲夫 ヴィオラ:小野富士 チェロ:藤森亮一)

 

【第19位】

7/18 東京フィルハーモニー交響楽団 第850回サントリー定期シリーズ

@サントリーホール

 

シューマン:交響曲第2番

ブラームス:交響曲第2番

 

大植英次指揮 東京フィルハーモニー交響楽団

 

【第18位】

3/24 東京都交響楽団 第767回定期演奏会Aシリーズ

@東京文化会館

 

ベートーヴェン:交響曲第1番

ブルックナー:交響曲第1番(リンツ稿)

 

小泉和裕指揮 東京都交響楽団 

 

【第17位】

3/29 東京・春・音楽祭―東京オペラの森2014

東京春祭 歌曲シリーズ vol.12 マルリス・ペーターゼン(ソプラノ)

@東京文化会館

 

R. シュトラウス:献呈

シューマン:女の愛と生涯

R. シュトラウス:6つの歌より おとめの花、オフィーリアの歌

リーム:赤

 

ソプラノ:マルリス・ペーターゼン

ピアノ:イェンドリック・シュプリンガー

 

【第16位】

10/13 ケント・ナガノ指揮モントリオール交響楽団

@よこすか芸術劇場

 

ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」交響的断章

ラヴェル:バレエ音楽「マ・メール・ロワ」

ラヴェル:ラ・ヴァルス

ラヴェル:ボレロ

~アンコール~

ベルリオーズ:序曲「海賊」

日本の歌より 青い目の人形~十五夜お月さん~赤い靴(ベインタス編曲)

ビゼー:劇付随音楽「アルルの女」第2組曲より ファランドール

 

ケント・ナガノ指揮 モントリオール交響楽団

 

【第15位】

3/8 東京都交響楽団 「作曲家の肖像」シリーズ Vol.96 《マーラー》

@東京芸術劇場

 

マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」 

 

ソプラノ:澤畑恵美、大隅智佳子、森麻季

メゾ・ソプラノ:竹本節子、中島郁子

テノール:福井敬

バリトン:河野克典

バス:久保和範

合唱:晋友会合唱団

児童合唱:東京少年少女合唱隊

エリアフ・インバル指揮 東京都交響楽団

 

【第14位】

6/27 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第300回定期演奏会

@横浜みなとみらいホール

 

マーラー:交響曲第2番「復活」

 

ソプラノ:秦茂子

アルト:藤井美雪

合唱:神奈川フィル合唱団

川瀬賢太郎指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

 

【第13位】

5/27 東京都交響楽団 第771回定期演奏会Bシリーズ

@サントリーホール

 

メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第1番

コルンゴルト:交響曲 

 

ピアノ:サリーム・アブード・アシュカール

マルク・アルブレヒト指揮 東京都交響楽団

 

【第12位】

6/14 東京交響楽団 第621回定期演奏会

@サントリーホール

 

ブーレーズ:ノタシオンⅠ-Ⅳ(管弦楽版)

ベルリオーズ:夏の夜

シューベルト:交響曲第8番「ザ・グレイト」

 

メゾ・ソプラノ:サーシャ・クック

ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団

 

【第11位

4/18 新日本フィルハーモニー交響楽団 第524回定期演奏会

@すみだトリフォニーホール

 

シベリウス:交響曲第4番

ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

 

上岡敏之指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団

 

【第10位】

10/4 東京交響楽団 第623回定期演奏会

@サントリーホール

 

プロコフィエフ:交響曲第1番「古典」

プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番

~ソリスト・アンコール~

クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ、カプリース

プロコフィエフ:バレエ音楽「ロミオとジュリエット」より

 

ヴァイオリン:マイケル・バレンボイム

サントゥ=マティアス・ロウヴァリ指揮 東京交響楽団

 

【第9位】

10/4 新日本フィルハーモニー交響楽団 第531回定期演奏会

@すみだトリフォニーホール

 

ツィンマーマン:管弦楽のスケッチ「静止と反転」

ベートーヴェン:荘厳ミサ曲

 

ソプラノ:スザンネ・ベルンハルト

メゾ・ソプラノ:マリー=クロード・シャピュイ

テノール:マクシミリアン・シュミット

バス:トーマス・タッツル

栗友会合唱団(合唱指揮:栗山文昭)

インゴ・メッツマッハー指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団

 

【第8位】

12/8, 9 東京都交響楽団 第780回定期演奏会Aシリーズ&第781回定期演奏会Bシリーズ

@東京文化会館、サントリーホール

 

バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽

フランツ・シュミット:交響曲第4番

 

大野和士指揮 東京都交響楽団

 

【第7位】

10/31 水戸芸術館・専属楽団 新ダヴィッド同盟 演奏会

@水戸芸術館 コンサートホールATM

 

モーツァルト:ピアノ四重奏曲第1番(庄司、磯村、グリーンスミス、小菅)

コダーイ:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲(佐藤、グリーンスミス)

フランク:ピアノ五重奏曲(庄司、佐藤、磯村、グリーンスミス、小菅)

~アンコール~

ドヴォルジャーク:ピアノ五重奏曲第2番より 第3楽章

 

ヴァイオリン:庄司紗矢香、佐藤俊介

ヴィオラ:磯村和英

チェロ:クライヴ=グリーンスミス(ゲスト)

ピアノ:小菅優

 

【第6位】

3/17 東京都交響楽団 第766回定期演奏会Bシリーズ

@サントリーホール

 

マーラー:交響曲第9番

 

エリアフ・インバル指揮 東京都交響楽団

 

【第5位】

9/27, 28 NHK交響楽団 第1789回定期公演 Aプログラム

@NHKホール

モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」 

 

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 NHK交響楽団
 

【第4位】

12/7 ミューザ川崎シンフォニーホール 開館10周年記念コンサート

@ミューザ川崎シンフォニーホール

 

マーラー:交響曲第8番「千人の交響曲」

 

ソプラノ:エリン・ウォール、メラニー・ディーナー、アニカ・ゲルハルズ

アルト:イヴォンヌ・ネエフ、ゲルヒルト・ロンベルガー

テノール:ニコライ・シューコフ

バリトン:デトレフ・ロス

バス:リアン・リ

オルガン:近藤岳

東響コーラス(合唱指揮:冨岡恭平)

東京少年少女合唱隊(合唱指揮:長谷川久恵)

ジョナサン・ノット指揮 東京交響楽団
 

【第3位】

7/20, 21 東京都交響楽団 都響スペシャル

@サントリーホール

 

マーラー:交響曲第10番(クック版)

 

エリアフ・インバル指揮 東京都交響楽団

【第2位】

7/7 Bunkamura25周年記念 フランス国立リヨン歌劇場 歌劇「ホフマン物語」

@Bunkamuraオーチャードホール

 

オッフェンバック:歌劇「ホフマン物語」(全5幕/原語上演/日本語字幕付き) 

 

演出:ロラン・ペリー

ホフマン:レオナルド・カパルボ

オランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステッラ:パトリツィア・チョーフィ

リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:ロラン・アルバロ

ミューズ/ニクラウス:ミシェル・ロジエ

アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:シリル・デュボア

ルーテル/クレスペル:ピーター・シドム

ヘルマン/シュレーミル:クリストフ・ガイ

ナタナエル/スパランツァーニ:カール・ガザロシアン

アントニアの母:マリー・ゴートロ

フランス国立リヨン歌劇場合唱団(合唱指揮:アラン・ウッドブリッジ)

大野和士指揮 フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団

【第1位】

10/2 新国立劇場 リヒャルト・ワーグナー「パルジファル」

@新国立劇場 オペラパレス

 

ヴァーグナー:舞台神聖祝典劇「パルジファル」(全3幕/ドイツ語上演/字幕付)

 

演出:ハリー・クプファー

アムフォルタス:エギルス・シリンス

ティトゥレル:長谷川顯

グルマネンツ:ジョン・トムリンソン

パルジファル:クリスティアン・フランツ

クリングゾル:ロバート・ボーク

クンドリ:エヴェリン・ヘルリツィウス

ほか

新国立劇場合唱団(合唱指揮:三澤洋史)

飯守泰次郎指揮 東京フィルハーモニー交響楽団

以上、長文にお付き合いいただきありがとうございました。今年も素晴らしい公演が沢山ありましたが、その中でも「これは!」という物を好き勝手に選ばせていただきました。来年も皆様が多くの素晴らしい公演に出会えますように。

昨日サントリーホールにて行われた交響曲第10番(クック番第3稿)の演奏会をもって、インバル/都響による新マーラー・ツィクルスが完結した。楽団としては3月の第9番を完結としていたが、インバルの考えを尊重すれば今回の10番こそが本当の終わりとしてよいだろう。

 

2009年からインバル/都響を可能な限り追いかけてきた自分としても、一つの区切りがついた感慨にとらわれている。

 

初めてインバルを聴いた「巨人」のCD初めてインバルを聴いた「巨人」のCD

 

クラシックを本格的に聴くようになって間もないころ、彼とフランクフルト放送響の「巨人」のCDを買い、それまで聴いていたアバドやワルターのディスクとは全く異なる分析的な音作り(録音ポリシーも含め)に唖然としたのをはっきりと覚えている。熱狂的感動とは程遠い、「何だこれは?」という戸惑いが最初の出会いだったインバルが、都響という在京オケを振ると知ったのが5年前の3月。月末にチャイコフスキーの5番をみなとみらいホールまで聴きに行った。これが、初インバル・初都響。

このチャイコフスキー5番が失神するほど強烈な印象を与えた。正直、期待していなかったのだ。というのもその前年にテミルカーノフ/ペテルブルク・フィルによる文句のつけようのない演奏を聴いていたので、「国内オケに超えられるはずがない」と高を括っていたのだ。まったくなんとも生意気な中学生である。インバルはこの曲からお涙頂戴的な情緒を剥ぎ取り、緩急のコントラストをグロテスクなまでに強調した。彼の指揮の下都響は金管群を中心に、ホールを揺るがせんばかりの熱演を披露、当然会場は沸きに沸いた。「インバルとはこんなに凄い指揮者だったのか!こんな国内オケがあるなんて!」この二つの思いがたちまち芽生え、その日から私は彼らの公演を最優先事項の一つとして設定した。

 

痛恨だったのは中高が全寮制だったことで、長期休暇以外は基本的に東京での演奏会を聴くことが出来なかった。本能的に「これは聴かなければ!」と思った公演は無理をしてでも行ったが、マーラーに劣らず名演揃いの一連のベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、ショスタコーヴィチなど多くの公演を聴き逃した。12年9月からの新ツィクルスについても同様で、結局聴けたのは3, 4, 5, 8, 大地の歌, 9, 10にとどまった。

彼らのマーラーを初めて聴いたのは10年3月の都響スペシャル・交響曲第3番で、一階席前方の席でインバルの気迫を浴びまくった衝撃の体験だった。新ツィクルスが発表された時、自分は「このコンビのマーラーをまとめて聴ける!」と狂喜乱舞だったが、「またやるのか」「金集めじゃないのか」という批判の声も少なくなかったように思う。だが果たしてツィクルスが終わって振り返ってみると、インバルの演奏に「同じことの再現」などという概念が全く当てはまらないことを痛感した。彼のレパートリーは膨大で、どの作曲家を取り上げても水準以上の演奏をする職人肌の一面を持ちながら、ことマーラー演奏に関しては「求道者」とも言える尋常ではないこだわりを持っている。マーラー演奏における彼の理想は非常に高く、決して満足することはない。事実、わずか2年を置いて取り上げられた交響曲第3番のアプローチはかなり異なり、贅肉を削いで曲の核心に切り込まんとする姿勢が感じ取れた。(今回のこの高水準のツィクルスを経てもなお、『もう一度ツィクルスをやりたい』とまで言っているとか)

 

そんなマーラーの伝道師であるインバルが偏愛するのが、第10番クック版である。彼は補筆者であるD. クックと交流を持った最後の世代の指揮者であり、「彼はマーラーの草稿から全ての素材を採って曲の補筆を行った」としてその仕事を非常に高く評価している。ただ、1989年に弟子達が出版した第3稿第2版には賛同しかねる部分も多いそうで、今回は現在一般に流通している第2版のスコアに手を加えての演奏となった。おそらく、インバルはオーケストレーションを出来るだけ厚くすることで「マーラーらしい響き」を得ようとしているのだろう。結果、フランクフルト放送響とのCD、コンセルトヘボウ管との映像から更に進化したインバルによる「最新の」クック版演奏となった。

版問題はこのくらいにして、2日間の演奏について軽くまとめておきたい。お友達の方のご親切によりゲネプロから体験できたため、実に3回インバル/都響の10番を聴くことができたわけだが、やはりインバル、それぞれに相違点があり、最終日に全てを出し尽くしたという感がある。

初日のゲネプロでは第1楽章が豪速でやや違和感あり。各所で止めてやり直しをしていたので全曲通すためだったのかもしれない。そして本番では幾分落ち着いたテンポ(他の指揮者に比べると速い)。難所の多い大曲ゆえ指揮者・オケともにかなり慎重に進んだ印象で、特に難しい第2楽章のリズムは鈍い感あり。ただ全体としての流れがピンと一本の糸のように明快で、第5楽章でインバルは激しく振るもがっちりとフォルムは維持されていた。2日目ではインバルがより熾烈にオケを煽り、流れのスムースさは幾分犠牲になったもののより「インバルらしい」うねりを伴う音楽に。2楽章もしっかりメリハリが付き、終盤の難所ではまさかの加速!そして終楽章のホルンによる1楽章冒頭主題の回帰の後、低弦の唸りに続く弦楽器群によるフルートの旋律の再現では、今にも指揮台から転げ落ちるのではないかというような激しい指揮!コンセルトヘボウとの同曲演奏で見せたその没入の凄さ、最終日にようやく見ることができた。強烈な響きが脳にこだまする中、13度のグリッサンドで全てを吐き出して曲は終わった。

 

演奏としてのまとまりの良さは初日に軍配が上がるだろうが、インバルがやりたかったのはまさに2日目の終楽章のような音楽なのではないだろうか。どこに居ても異邦人としての孤独を味わい、最愛の伴侶アルマにも裏切られて世を去ろうとする絶望、死に切れない悲痛な叫び、しかしそれらを嚙み締めてもなお「女性」という永遠なる存在を信じようとするマーラーの切実な愛・・・。彼がこの曲を完成できずに世を去ったことは本当に痛恨の極みだが、クック版という残されたセカンドチョイスを信じてマーラーの遺言を再現させようとするインバルと都響の執念に涙した。嗚咽した。

この難曲における都響の献身はいつも以上で、特に実に3本のトランペットを持ち替えて巧みな演奏を繰り広げたTrpの岡崎氏、終楽章のあまりに美しいソロを吹いたFl寺本氏、素晴らしい打音で曲を引き締めたミリタリードラムの女性奏者は会場の絶賛を浴びていた。勿論他のセクションも素晴らしい演奏だった。オケがはけた後もインバルはやまぬ拍手に応じ2回ステージに現れ、最大級の賛辞を受けた。

 

まさにマーラー・ツィクルスを完璧に締めくくる凄演であった。と同時に、インバルが都響の首席指揮者として築いてきた一つの黄金期がここで終止符を打たれたという印象を持った。勿論今後もインバルと都響は名コンビであり続けるだろうし、大野次期音楽監督の下都響も更なる発展を遂げていくだろう。だが、昨日のインバルに対する聴衆の熱狂的反応は紛れもなく、一つの時代の終焉に対する惜別の念の表れだろう。

ありがとう、マエストロ・インバル。ありがとう、都響。

第9交響曲を完成した当時のマーラーは心臓病による健康不安こそあれ、まだ活発に音楽活動を行っていた。

それゆえ、第9交響曲がマーラーの「白鳥の歌」 とは必ずしも言えないという見解が最近主流となっているようだ。私もその意見に概ね同調する次第であるが、 時間軸的な観点だけでなく作品の特徴から見ても、やはり第9交響曲はマーラーの遺言ではないと思う。

 

Gustav Mahler
Gustav Mahler

 

ベートゲ編纂の「中国の笛」を手にして独自の死生観を「大地の歌」で昇華させたマーラーは、Ewig, Ewig...と曲を締めくくったが、第9交響曲冒頭の音型にEwig, が戻ってくる。

 

ここで一つ思うのが、第9交響曲以降はマーラーが生への執着を綴った私小説ではないかということ。「大地の歌」までの作品で、彼は聴衆へのメッセージは伝えきっていると思うのだ。後の作品は彼自身のための人生のエピローグであり、独白である。

 

その第9交響曲では、胸中の思いをありったけ吐露するような第1楽章が終わったと思えば、中間楽章では悪魔がその思いをせせら笑い、かき乱す。「生きたい!生きなければ!」と叫ぶマーラーの思いは第4楽章の引き裂かれるような(同時にブルックナーの遺作を髣髴とさせる)下降音型にて表現され、弦楽を中心に延々と嘆きの歌が続く。それが全合奏による頂点に達した後は、生への執着に精魂果てたような静謐な音楽がやってくる。ここからは音量はごく微弱に落とされ、弦4部による繊細極まりない情景が描かれるが、終結付近に注目すべき点がある。下降音型の中に、力なく抵抗するような上昇音型がわずかに出現するのだ。これこそ、マーラーの最後の生への未練であり、執着であろう。

このように現実世界に留まろうともがきつつも、力及ばず彼岸へと渡ったマーラーは、死力を振り絞り本当の遺言を書き始める。彼の遺作である第10交響曲は、まさに彼岸から現世を見つめた作品なのだ。第2楽章~第4楽章の達観した、奇妙な浮遊感はまさにそこに理由があると思う。

 

一昨年マーラーの研究をした頃の記憶を覚醒させ、この駄文を執筆する活力を与えてくれたのは他でもない、マエストロ・エリアフ・インバルと東京都交響楽団による第9交響曲の演奏である。マエストロの透徹した作品への目線と、都響の限りない献身は、まさに現世に執着しもがくマーラー像を具現した。20世紀音楽への扉を開いた1楽章の精緻な構築、中間楽章の冷徹なまでの諧謔、そして第4楽章の悲痛な叫び。特に、全合奏の頂点において弦楽器がボウイング、弓幅ともに統一せずかき鳴らしたトーン・クラスターは当夜の白眉であり、この演奏の性格を決定づけるものだった。本公演は、マエストロの6年間の都響プリシパル・コンダクターとしての任期の最終公演にあたったもの。シェフとして最後の演奏会として、まさにこれ以上ないものであった。幸いにしてマエストロと都響の関係はこれからも続く。まずは7月、マーラーの真の遺言・第10交響曲を味わいたい。

 

駄文・長文失礼しました。

 

2014年3月17日(月) 19時開演 @サントリーホール 

東京都交響楽団 第766回定期演奏会 Bシリーズ

 

マーラー:交響曲第9番

 

管弦楽:東京都交響楽団

コンサートマスター:山本友重

指揮:エリアフ・インバル

 

(敬称は省略させていただきました) 

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